標本写真の撮り方 黒バック編その2
魚類や甲殻類の標本をかっこよく撮影する方法を紹介します。
今回はエタノールで保存されているスジエビ Palaemon paucidens の標本写真が出来上がるまでを解説します。
※無断転載はお断りしています。
※ご意見・質問等は下記の参考資料を見ていただくか、こちらまで:yfa73986(あっと)gmail.com
撮影
カメラで撮影後に画像をパソコンで編集、という手順で標本写真を作り上げます。
撮影はこのような設備で行います。
水槽は30×30×7(cm)水槽、カメラは愛機のPENTAX K-3Ⅱで、35mmマクロレンズを使用しています。
照明はLED電球を使用しており、ディフューザーで光を拡散しています。
70%エタノールで保存されている液浸標本なので、水には沈めず、そのまま水槽直置きで撮ります。
こんな感じで撮影します。ただし、このまま撮ると、以下のような感じになります。
どうしても、ライトに照らされたカメラやダブルピース、天井が写り込んでしまいます(露光量+2.00、ハイライト-100)。
撮影時には、諸々の写り込みを防ぐために、暗幕が貼ってあるダンボールを使います(自作)。
黒バックはとにかく写り込みとの戦いです。
レンズに装着するとこんな感じです。
この小道具を使って撮るとこんな感じになります(露光量+2.00、ハイライト-100)。
写り込みはかなり改善しましたが、ゴミやエビ自体の写り込みが目立ちますね。
本ページでは、これらの消し方+αを解説します。
編集 〜Lightroomでの作業〜
ここからAdobe Lightroom Classic CCでの作業になります。
前回解説しましたので詳細は省略しますが、まずホワイトバランス調整のために本番と同様の条件でグレーカードを撮影しておきます。
その後、写真をAdobe Lightroom Classic CCで読み込みます。
スポイトツールでグレーカード上の適当なところを選択します。2枚のどちらでも大丈夫です。
するとホワイトバランスを適正値に調節してくれます。
この画像の設定を他の画像にも適用するので、ついでに共通の設定もしておきます。
まず、「プロファイル」の「色収差を除去」と「プロファイル補正を使用」にチェックを入れます。
次に、「変形」の「切り抜きを制限」にチェックを入れます。傾きを補正をするとできる四隅の空白を自動でトリミングしてくれます。
他には「基本補正」の「黒レベル」をちょっと下げておいてもいいかもしれません。
設定をいじった画像を右クリックして「現像設定」→「設定をコピー」します。
何も考えずにすべてにチェックを入れて現像設定をコピーします。
他のすべての画像を選択して、現像設定をペーストします。
これでホワイトバランスやレンズ補正を一括で調節できます。かしこい。
その後、適当な場所に書き出します。
編集 〜Photoshopでの作業〜
ここからAdobe Photoshop CC 2018での作業になります。
Lightroomで書き出した画像をPhotoshopで読み込みます。
レイヤー、カラー、色調補正のウィンドウはよく使うので表示しておくと便利です。邪魔だったらF7で消したり呼んだりできます。
ゴミを見やすくするためにまずは色調補正を行います。
色調補正の「明るさ・コントラスト」で明るさを最大にします。
この設定はあとで消します。白飛びしても気にしないでください。
その後、「ブラシツール(B)」で標本の周辺を黒く塗りつぶしていきます(カラーをK=100%にする)。
ブラシで塗りつぶしたものがこちらになります。だいたいで大丈夫です。適当、適当。
次に「塗りつぶしツール(G)」で標本の周辺も塗りつぶします。
標本の色の濃い部分が間違って塗りつぶされてしまう場合は上のツールバーにある「許容値」を下げて調節します。
色調補正はこの時点で用済みなので、レイヤーから「明るさ・コントラスト」を削除します。
塗りつぶしたものがこちらになります。
塗り残しがあっても次のステップで倒すので気にしなくて大丈夫です。
細かい所に塗りきれていない部分があるかもしれません。
まず「選択ツール(M)」か「投げ縄ツール(L)」で塗り残しのある範囲を選択します。
「塗りつぶしツール(G)」で許容値をあげて塗りつぶします。
標本が塗りつぶされないように適当な許容値を探って頑張ります。
他の部分についても同様に処理します。もしくは、誤って塗りされてしまう部分をマスク(選択してから「選択範囲の反転」を行なう)してから、全体を許容値をあげて塗りつぶす方法もあります。
満足したら別名で保存しましょう。
おまけ 〜スケールバーの入れ方〜
Illustratorでやった方が楽ですが、あえてPhotoshopでやってみます。
画像のスケールの部分を拡大します。今回は10 mmのスケールをいれてみます。
まず、「ラインツール(U)」を使います。
10 mmの線を引きます。水平は定規に合わせます。
定規が傾いている場合は長さを揃えてから、Shiftキーを押しながらホールド解除すると自動で水平にしてくれます。
「テキストツール(T)」で文字をいれます。
スケールとテキストのレイヤーの2つを選択して、適当な場所に移動させます。
ラベルとスケールは不要なので「ブラシツール(B)」で消し去ります。一番楽しい所です。
出来上がったのがこちら。この状態でOKなら画像のレイヤーを右クリックして「レイヤーを統合」してから別名で保存します。
トリミングする場合は選択ツール(M)を使います。上のツールバーで縦横比を設定できます。
切り抜く範囲を選んだら右クリックして「選択範囲をカットしたレイヤー」を選択。
新しいレイヤーができるので、元のレイヤーを削除します。
画像のレイヤーを右クリックして「レイヤーを統合」してから別名で保存します
完成した写真がこちらになります。
撮影設定:露光量1/4秒、f10、ISO200
現像設定:色温度4,800、色かぶり補正+28、黒レベル-15
参考資料
基本から応用まで、こちらのマニュアルに事細かに書いてあり、大変参考になります。
魚類標本の作成から撮影まで、極めて有用なTipsが盛りだくさんで、大変参考になります。